ショップの売上高を伸ばす(2)


4.コンセプトを数字で考える


図2を参照してください。

 

①コンセプトとは

どの数字も伸ばせと檄を飛ばす上司は「点を取れ」としか指示しない無策な野球監督のよう

なものです。

 

振るか、バントか、良い監督は状況を見て指示を出すはずです。チームの個性によって、バ

ントが得意とか、振らせることで士気が上がるとか判断するはずです。チームの現状に対し

方針を持って臨む、コンセプトとはこの方針のようなものです。

 

ショップの場合コンセプトは、どのような人をお客様とするか、そのお客様のどんなニーズ

に応え、何をどのように売るか、で表されます。

コンセプトはショプのイメージを決めるだけでなく、商品構成や運営、売上高の伸ばし方も

コントロールする基本的な考え方です。

 

再びA店を例にします。

実存する個人経営の路面店をアレンジしました。高額所得の40代女性のもつ、プライドを

保ちつつ可愛くありたいというニーズに、上品で可愛いファッションを、お客様のライフス

タイルやワードローブを把握しながら提案するのがコンセプトです。

 


②コンセプトと入店客数

入店客数はどんなショップでも伸ばさなければなりません。しかしA店の場合、接客時間が

長いので、たくさん入店されても対応できません。

既存顧客の来店促進に力を入れた上で、新規顧客は顧客の口コミによる獲得を進め、購入意

欲の高い入店客数が徐々に増えてゆくのが良いでしょう。

 

反対に幅広い通行者を対象として入店客数獲得に力を入れるべきコンセプトを持つショップ

はどうでしょうか。

例えば看板は派手で入口は大きく、ワゴンが歩道ぎりぎりまで出ている。そんな感じでしょ

うか。誰でもウェルカムの信号を出しているわけです。ディスカウントショップやドラッグ

ストアなどで見られます。

 

このようにコンセプトによって入店客数獲得への力の入れ方や取り組み方は異なります。

自店のコンセプトは入店客数重視型、新規顧客重視型、固定客重視型などのどのタイプなの

か確認しながら具体策を立案したいと思います。そうすれば、A店は電光看板導入には至ら

なかったと思います。


③コンセプトと買上率

入店客数と買上率のどちらを重視するのか、どちらも重視するのか、

コンセプトによります。

もちろんどちらも重視したいのですが、現実には限られた資源をどちらに多く振り分けるか

の判断を迫られる場合があります。例えば看板に費用をかけるか、店員の接客訓練に費用を

取るか、コンセプトとの関係で決めることになります。

 

 一般的には、看板やショーウィンドーなどの雰囲気と商品の価値観が一致している、とお

 客様が納得した方が買上率は上がるといわれています。価格引き下げは買上率の向上につ

 ながるかも知れません。しかしこれもコンセプトに関わります。A店のようなコンセプト

 の場合は、ショップの価値が下がったと感じ、固定客か離反する可能性があります。

 

A店の場合は固定客や購入意欲が高い人の入店するケースが多いでしょう。

買上率を伸ばすことで買上客数を高めるのがコンセプトに対応しているといえます。

もちろん入店客数が増加しにくいコンセプトだからこそ、入店客数を伸ばす手立ても必要に

なります。


④コンセプトと1人当り買上点数

1人当り買上点数も多くしたいのですが、これもコンセプトに関わります。生活雑貨店は、

単価が低いので多くの商品を買っていただく方針になる傾向があります。また生活空間のコ

ーディネートを楽しむ雑貨、というようなコンセプトだとしたら、テイストなどでの商品間

の関連性が強くなり、関連購買の可能性が高くなります。

 

A店の場合は、一つは顧客のワードローブとのコーディネーションを提案し、単品でも高額

な商品を販売するというコンセプトもあるでしょう。もう一つは単品ではなく、その使いま

わしのための服飾雑貨の関連購買を進めるという考え方もあるでしょう。


⑤コンセプトと買上商品平均単価

開店計画ではコンセプトを考え、ターゲットを想定します。ターゲットはどのくらいの価格

の商品を購入するか考え計画します。

計画通りの買上商品平均単価にならないとしたら、想定が間違っていたか、対応が未熟なの

かを見極めなければなりません。

 

単価を伸ばす対応は、単純にはより高額な商品を仕入れ顧客に勧めるなどを考えるかもしれ

ません。しかしそれを購買につなげるには、商品知識、接客技術、優良顧客の獲得などが必

要です。

根本的にはショップのブランド力を増し、信頼性を確保することが大切になります。

 

A店の場合は固定客に提案するのですから

固定客の研究、商品知識の深化、接客技術の高度化を図り、高付加価値商品の仕入れ先の確

保をしないと売上増加は見込めないと思われます。

 

計画の想定が間違っている場合もあります。

その場合は速やかに修正すべきです。ただしショップ全体からの視点が必要です。

「この地域は高額だと無理」と言い、すぐ低価格商品を増やす店長がいます。価格を下げる

と、1人当り買上点数や買上客数を伸ばさないと売上高が低下します。お店のイメージや店

舗の機能がこの変化に対応できるか、確認する必要があります。


⑥コンセプトと売上高の式

コンセプトと売上高の伸ばし方の一致が必要です。

コンセプトによって、入店客数、買上率、1人当り買上点数、買上商品平均単価のどれに比

重がかかるか、どれから着手すれば効果的かを判断する視点を持ちたいと思います。

開店計画でのコンセプト設定は単なるショップイメージではなく、売上高の作り方が想定で

きる内容であるべきです。良いコンセプトは運営管理の基準を明確にします。

つづく