何度も「目的」に立ち返る(3)


5.目標とは何か


◼︎客観的で主体的にかかわれる目印

ここでも図表3を参考にしてください。目的に対して目標は目印にあたります。目的を達成した場合や目的に至る過程を表す目安になります。これを達成したら目的がかなう、あるいは目的に近づいている、とみなす目印です。

 

「頭の体操」で父親が息子に競わせた目的は財産を譲ることでした競わせたのは、知恵と体力のあるものに財産を譲りたいとの目的があったかも知れません。その判定基準になるのが、馬を遅く到着させるという目に見える目標を息子に持たせることです。

 

息子たちの目標は当初は兄弟の背中を見ながら進むことになるでしょう。背中からの距離が目標です。しかしこの目標では、相手に左右される目標で、客観的な目標になりません。客観的な目標にならないと主体的にかかわれません。

 

自分の全速力でゴールに着くのなら主体的な目標になります。砂漠で死んでも相手より速くは着かない、という選択も目標にはなります。これではプライドは保てますが、幸せは手に入りません。

 

ショップの場合、値下げ競争がこれに当たります。どれだけ体力(財力)がつづくか身を削る競争です。ライバル店の値下げできる体力が自店より劣っていると客観的に判断できる場合。これ以外は相手を倒す明確な目標が立てられず、競争を止める基準が定まりません。客観的で主体的にかかわれないビジネスは避けたいものです。

 


◼︎時と量で表す

目的が、こうありたいと考えた質を表わすのに対し、目標は、このくらいの数字を達成したいと決めた「時」と「数量」で表すことが多いようです。

 

例えば「中高年に愛されるカフェ」になるのが目的だとします。その場合まず「1日当たり」とか、「月当たり」とかの「期間」を設定します。その期間のなかで中高年が何組来店するかを目標にするようなことです。

 


◼︎目標の必要性

目標は目印です。自分のビジネスがどのくらい目的に近づいているのか、どのくらい成果を上げているのかを目に見える形で確認する目印として目標が必要です。ビジネス上の課題を発見するためにも、さらには社員に達成意欲を持ってもらうためにも、目標の設定は必要です。自分一人ではじめるショップでも具体的な数字を掲げる習慣をつけたいものです。


6.目的と目標の関係


◼︎目的につながる目標

目標を売上高や利益率、店舗数などに置く企業が多いようです。これらはその企業の目的に沿った目標になっているでしょうか。目標は目的につながる目安となるような項目を選ぶ必要があります。

「中高年に愛されるカフェ」という目的の目安として、売上高を目標とするのなら、それはなぜ目安になりえるのかを考えてから設定してほしいのです。



◼︎目的と目標を一致させる工夫

目的はなりたい状態、目標はその目安です。目的は状態を言葉で表すことが多く、目標はそのレヴェルを数字で表すことが多いようです。


しかし、目的の言葉を目標の数字に置き換えるのは、簡単ではありません。「寒い」という感覚は5度、「暑い」というのは30度と簡単には言えないのに似ています。


「中高年に愛されるカフェ」という目的に対して、「中高年が一日100人来店する」という目標を設定したとします。これは、目安としてそう考えることにしたという仮説です。目的を出来るだけよく表現する数値を設定する工夫が必要です。目的と目標が一致しているかを検証する必要もあります。



◼︎目的と目標の一致が成果を生む

「お客さんを大切にする企業を目指すといいながら、売上げノルマのことしか求めない」などの不満が従業員から出るときがあります。これは目的と目標が一致していない場合に多いようです。


目的と目標が一致しているほど成果が生まれやすくなります。なりたい状態に向かっているという達成感を得ながら業務が進められるからです。一人だけではじめる個人店でも、従業員がいる場合でも必要なことです。